岬研究室

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どんな証拠でも使えるの? 証拠能力の話(神戸地裁昭和59年5月18日判決)

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1 証拠能力とは

 まず,証拠能力とは,「証拠方法としての適格性」等と説明されていますが,簡単にいうと,証拠として扱ってもらえる能力と考えてもらえばいいかと思います。

 この証拠能力がないとされると,証拠として扱ってもらえず,証拠排除(証拠として使えなくなる)されてしまいます。その結果,証拠から読み取れる事実が認定されなくなってしまうと,要件事実が認定されず,請求が棄却されてしまうことになります。

 

 この証拠能力について,刑事訴訟法はめちゃくちゃ詳しく規定しています。しかし,民事訴訟法においては,証拠能力について詳しく定めた規定がありません。なので,どのような証拠であっても一応証拠として使えるというのが原則です。

 もっとも,どんな証拠でも採用されるとしてしまうと,「証拠さえ手に入ればどんな手を使ってもいい」という風潮になってしまうため,判例によって一定の制限がなされています。

 

2 判例の事案の概要

 タイトルに挙げた判決は,原告が被告に対して損害賠償を請求したという裁判で,証拠として文書が提出されたのですが,被告が,「これらの文書は,被告が保管中に何者かに盗まれたものなので,違法収集証拠として証拠排除するべきである」として証拠排除を申し立てたので,この文書の証拠能力について判断されることになりました。

 

3 判決の概要

 「民事訴訟においては,・・・,信義則上これを証拠とすることが許されないとするに足りる特段の事情がない限り,民事訴訟における真実発見の要請その他の諸原則に照らし,文書には原則として証拠能力を認めるのが相当であり,単に第三者の窃取にかかる文書であるという事由のみでは,なおその文書の証拠能力を否定するには足りないものと解すべきである。」

 とし,本件では誰かが盗んだのかさえ不明なのだから,特段の事情がなく,証拠排除の申立は認められないと判断しました。

 

4 判決から読み取れること

 上記判決の内容をわかりやすくすると,「自分で盗んだり,だれかに盗ませたりして文書を手に入れたみたいなよっぽどのことがない限り,文書には基本的に証拠能力を認めるよ」ということです。

 このように,民事訴訟においては証拠能力が緩やかに認めらているので,無断で録音した会話の音声データや,共用パソコンに保管されていたメールについても大概の場合は証拠能力が認められてしまいます。

 

5 論述で書くならこんな感じ

 上記判決の内容に沿って書くとしたらこんな感じでしょうか。

 

「本件では,書証が証拠として提出されているが,この書証は,被告が保管中に盗難にあったものである。そこで,このような文書にも証拠能力が認められるかが問題となる。

 真実発見の観点からは,書証についてはその入手過程にかかわらず証拠能力を認めるべきであるとも思える。しかし,いかなる証拠にも証拠能力を認めるとすれば,窃盗等の違法行為を助長することにもなりかねない。そこで,信義則上これを証拠とすることが許されないとするに足りる特段の事情がない限り,文書には原則として証拠能力を認めるべきであると解する」

 

6 まとめ

 民事訴訟においては,証拠能力はとても緩やかに認められており,証拠能力がないとされるのはごく例外的な場合です。

 なので,試験で証拠能力の有無について聞かれた場合は,直接本人が盗んできたというようなとてもわかりやすいごく例外的な場合を除き,基本的に「ある」と書いたほうが無難かと思います。 

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