岬研究室

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事業者のための事例から学ぶ非弁行為

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事業者のための非弁行為の解説(参考裁判例:東京地裁H29.2.20)

 最近、業界で「●●●で非弁の番組が!」という話題が盛り上がっているので、今回は非弁行為に関する裁判例の解説です。

 

1 事案の概要

 原告が、ウェブサイト上に掲載された記事を削除するための業務を被告に依頼したところ、削除を依頼した記事のうち、一部は削除されたものの、一部については被告から削除することができないと通知され、当該部分については依頼を撤回した。

 その後、同契約は、弁護士法72条に違反し無効であるとして、被告に対し、不当利得返還請求権及び不法行為に基づきおよそ1150万円の支払いを求めた。

※ちなみに、請求額の内訳は、代金が約50万円、慰謝料が1000万円、弁護士費用が100万円です。

2 判決の概要

 弁護士法違反を認め、不当利得返還請求約50万円部分については認容した(他人に代わってウェブサイトに掲載された記事を削除するための業務を行うという契約は、弁護士法72条に違反し無効)が、慰謝料請求については棄却された。

3 非弁に関する部分は?

非弁とは

 裁判例の、「2 争点1(本件契約が弁護士法72条本文に違反するか)について」という部分の中に出てくるのですが、「弁護士法72条前段は、弁護士又は弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、業として、法律事件に関する法律事務を取り扱うことを禁止」しています。

 この、「弁護士又は弁護士法人でない者(非弁護士)が、報酬を得る目的で、業として、法律事件に関する法律事務を取り扱うこと」(弁護士法72条に違反する行為)を、非弁護士行為、略して非弁行為と呼んでいます。

削除要請って法律事件なの?

 ただお願いするだけなら「事件」とまでいえないと考えるかもしれませんが、裁判例では、「弁護士法72条本文前段にいう「法律事件」とは、法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は、新たな権利義務の発生する案件をいうと解される」としたうえで、削除要請については、「ウェブサイト運営者の表現の自由と対立しながら、これにより本件各記事が削除され、原告の人権侵害状況が除去されるという効果を発生させることになるのであるから、単純かつ画一的に行われるものとはいえず、新たな権利義務関係を発生させるものである。」として、「法律事件に該当する」と判断しています。

 某コンメンタールでは、「争いになっていなければ事件性がないんだ」みたいなことが書かれていましたが、裁判例からすると誤りです。権利義務に疑義があったり、新たな権利義務が発生する案件であれば事件性の要件はクリアしてしまいます。

 また、新たな権利義務の発生で足りることからすれば、契約締結の代理や、預貯金の払戻(実は預金契約に基づく預金払戻請求権の行使になる。)なんかも新たな権利義務の発生を伴いますので、事件性の要件をクリアしてしまう可能性が高いです。

単純なことだったら法律事務じゃない?

 単純な事務との線引について、裁判例は、「その他の法律事務」とは、法律上の効果を発生、変更する事項の処理や、保全、明確化する事項の処理をいうと解されている」とし、削除要請については、「・・・という行為は、原告の人格権に基づく削除請求権の行使により、ウェブサイトの運営者に対し、削除義務の発生という法律上の効果を発生させ、原告の人格権を保全、明確化する事項の処理といえる。したがって、本件各記事の削除のために被告が行った上記の業務は「その他の法律事務」に当たる」と判断しています。

 上述のとおり、預金の払戻しですら、契約終了の告知(払戻請求)により預金契約に基づく預金払戻請求権が発生し、その支払いを受けると弁済で同請求権が消滅するといった法律効果が発生してしまいます。単純=大丈夫というわけではありません。 

じゃあ、一回だけならセーフ?

 裁判例は、「業とする」ことについて、「「業とする」とは、反復的に又は反復的意思をもって法律事務の取扱い等をし、それが業務生を帯びるに至った場合を指すと解すべきである(最高裁昭和47年(オ)第751号同50年4月4日第二小法廷判決・民集29巻4号317頁参照)」とし、被告については、業務として行い、見積書兼申込書等の定型文書を作成していたことから、「法律事務の取り扱いを反復的に行っていたことは明らかである」としました。

 なので、「一回だけでした」と言っても、客観的事情から反復的にやっていそうな外観があると、言い逃れることは難しいのではないでしょうか。

 じゃあ、危なそうな活動について報酬をとらなければセーフ?

 「報酬を得る目的」について、裁判例は、「「報酬」とは、法律事務の取扱いのための対価をいい、額の多少や名称を問わないが、法律事務の取扱いとの間に直接的又は間接的に対価関係が認められることが必要であると解される」としています。

 「間接的な」対価関係があっても報酬を得る目的があったとなるので、「他のこと」について報酬をもらうと非弁行為になる可能性があります。

※ちなみに、「請求していないけどあちらからどうしてもというからお金を受け取ったんだ」という言い訳については、別に裁判例があります。 

非弁と判断された場合の契約の効果

 なんとなく、「でも仕事したんだから、いくらかの対価はもらってもいいんじゃない?」という感じがするかもしれませんが、非弁に該当すると、民法90条で契約が無効となり(最高裁昭和37年(オ)第1460号同38年6月13日第一小法廷判決)、代金は不当利得として返還しなければなりません。 

4 結局、非弁にならないためにはどうしたらいいの?

 正直なところ、弁護士でも当該業務が非弁にあたるかどうかの判断が分かれるものもありますので、法曹資格がない方に非弁かどうかを見分けるのは非常に難しいものと思います。

 微妙なサービス(●●代行等)について事業として開始しようとする場合には、事前に、できれば複数の弁護士にリーガルチェックを行ってもらうことをおすすめします。

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